“日本の夜明け” 横山 大観作『乾坤輝く』を鑑賞する

日本画

作品概要

  • 作品名 乾坤輝く(けんこんかがやく)
  • 画家 横山 大観(1868年~1958年)
  • 制作時期 1940年

大観について

概要

横山 大観(よこやま たいかん)は明治・大正・昭和にかけて活躍した日本画家です。

近代日本画壇を作り上げた画家の一人であり、昭和12年に第1回文化勲章を授与されました。

大観はそれまでの日本画にはなかった新しい試みに積極的に挑戦し、日本画の新境地を開拓しました。

それらは線の描き方や顔料の伸ばし方など多岐に及び、統一して“朦朧体”と呼ばれています。

生涯

横山大観の生涯はコチラ

無類の酒好き

横山大観は酒豪として知られています。

大観は昭和の初期に広島県の酒蔵である醉心山根本店の社長と意気投合しました。大観を気に入った社長は彼の一生分の酒を保証し、以後大観のもとには“醉心”が無償で送られ続けたそうです。

また酒とつまみで食事を済ませるがために白米をほぼ食べず、さらにそのような生活を50年続けたそうです。

 

ただし、若い頃の大観は酒がほとんど飲めず、1合も飲まずに酩酊したそうです。

そんな彼を師である岡倉天心は強く叱責しました。大酒のみだった天心は大観を軟弱だと非難したのです。

大観は夜な夜な吐きながら肝臓を鍛え、ついには日に1升の日本酒を飲むようになりました。

現代であればまごうことなきパワハラですが、時代柄と師への忠義がこれを克服させたのですね。

 

また、酒好きではありましたが決して酒に呑まれることはなく、中毒になることもありませんでした。

年が寄るにつれ酒の量を控え程よい酒量を保ち続けたために、当時としては非常に珍しく89歳まで生きておられたそうです。

鑑賞

 

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あらためて作品を見てみましょう。

横山 大観作『乾坤輝く』です。

 

富士山から日が昇り、またその日が富士の峰を照らす様子が描かれていますね。

乾とは”天”を、坤とは”地”を意味し、またものごとの陰陽も表しています。

大観は天を表す太陽と地を表す富士山を同時に描くことで、雄大な自然をシンプルに描きました。

薄暗い雲海から覗いた峰が輝く様子は、大観の愛国心や富士山への愛を如実に表現していますね。

 

雲や空は輪郭無しで柔らかく描いていますが、太陽と富士山はくっきりとした輪郭線を持っています。

これにより見る者の意識は自然と主役たちへ惹き付けられ、また作品全体に漂う神々しさが見る者の心を奪います。

 

大観は心の内にある理想の情景を見事に描き出しました。

 

この作品は島根県の足立美術館に収蔵されています。

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