“匂いすら表現した画家” 竹内栖鳳 作『班描』を鑑賞する

日本画

作品概要

  • 作品名 班描
  • 画家 竹内 栖鳳(1864年~1942年)
  • 制作時期 1924年(大正13年)ごろ

栖鳳について

概要

竹内 栖鳳(たけうち せいほう)は明治~昭和に活躍した日本画家です。

京都の四条派に師事し日本画を修めた栖鳳は、若いうちからその頭角を現し京都芸術界の筆頭として活動します。

また後進の育成に加え、西洋芸術を熱心に研究したことで日本画に革新をもたらしました。晩年は京都画壇を代表する大家へとなります。

生涯

制作背景

別記事で述べたように栖鳳は、幸野楳嶺の「画家にとっての写生帖は武士の帯刀である」という言葉に深く共鳴し、鳥や犬猫といった身近な動物から、虎やライオンなど珍しい動物まで一心不乱に描き写しました。(身近な動物のうちいくつかは、家で飼っていたそうです。)

その修行の様はもはや執念とすら思えるほどであり、愛用の写生帖には雉の肩や羽の付け根と言った、非常に細かい部分まで写生したものすらあったそうです。

彼を指して誰が言ったか

『けものを描けば、その匂いまで表現できる』

という謳い文句は、この修行の果てに得たものだったのですね。

 

今回紹介する作品は、八百屋の店先にいた猫を見て制作を思い立ったものだそうです。

芸術をこよなく愛し、また自身も最高峰の芸術家である、北宋の皇帝 徽宗(きそう)は12世紀に猫を描いていますが、

栖鳳が猫を画こうと思いついたのは、このエピソードを知っていたからだとも言われています。

 

もとは当該の八百屋で飼われていた物ですが、栖鳳は八百屋の女将と交渉し譲り受けると、昼となく夜となくそれを観察しました。

鑑賞

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あらためて作品を見てみましょう。

竹内 栖鳳 作『班描』です。

 

板の間、もしくは地面を思わせる背景に、毛繕いをしている猫が画かれた日本画です。

作品には他に画号が書かれているだけで非常にシンプルですが、それ故に猫の存在感は際立っており、今にも毛繕いを再開しそうなリアリティを感じますね。

 

まず引き込まれるのはこの繊細さでしょう。

なんという優しく軽やかな筆致でしょうか。全ての毛が1本ずつ丁寧に画かれており、近づいて目を凝らしても一切の隙がありません。

1つとして同じものは存在せず、それぞれが異なる役割を持つかのようにそれぞれの方向を向いていますね。

さらに驚くべきは、この毛並みが実際の猫同様に2層に分かれていることです。

これは上毛と下毛と呼ばれていますが、栖鳳は画中の猫の創造に当たり下毛を画いてから上毛を画き上げたと考えられます。

生き物を生物学に沿って正しく画くことで、実物と同等の写実性を表現できたのですね。

 

また、その姿勢の再現にも余念がありません。

振りむいた姿勢特有の肩甲骨が最も高く突き出される様や、前脚の角度、瞳の潤いや視線

写真が一般的ではない時代によくぞここまで再現できたと、ただただ驚嘆することしかできませんね。

 

大正日本画の最高峰の一角たるこの作品は、重要文化財に指定されました。

 

この作品は山種美術館に所蔵されています。(外部リンクに接続します。)

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