“大和絵の源流” 作者不明『源氏物語絵巻 -宿木二-』を鑑賞する

日本画

作品概要

  • 作品名 源氏物語絵巻 -宿木二-
  • 画家 不明
  • 制作時期 12世紀ごろ(平安時代末期)

源氏物語絵巻について

概要

源氏物語絵巻は平安時代末期に作られた日本最古の絵巻物です。

紫式部の著した源氏物語に挿絵を加えたものであり、当時の生活様式や風俗を知るうえで大変貴重な資料とされています。

また国風文化の形成とともに現れた“大和絵”の初期の作品であり、現在の日本画の源流とも言える絵画です。

源氏物語について

作者概要

絵巻の解説の前に源氏物語そのものの説明を示します。

 

前述したように著者は平安時代の女官 紫式部で、彼女は式部省(朝廷の人事や式典を管理する部署)に属する役人でした。

紫式部は朝廷での仕事の傍らで、宮中の様子を描いた“紫式部日記”や、貴族社会の恋愛模様を題材にした“源氏物語”を執筆します。

 

彼女は飛鳥・奈良時代から続く上代日本文学を次の世代につなぐ意味で非常に大きな功績を残したのですね。

また、歌人としての才能にも恵まれていたそうで、小倉百人一首や勅撰和歌集にも歌が残る“三十六歌仙”の一人です。

源氏物語のストーリー

源氏物語には、主人公の光源氏を中心に繰り広げられる恋愛模様が描かれています。

彼は皇子(天皇の子息)であり、成長する中で多くの人と関わりながら出世や愛憎を経験しました。

 

宮中は政治的野心や恋慕の情などが渦巻いており、人間の本性が剥き出しになる場所です。

本作品は前54編からなり、光源氏は準太上天皇(上皇に次ぐ地位)にまで上り詰める過程で、10人以上もの女性と関係を持ちました。

その愛憎の中では、六条御息所のような生霊を生むこともあったそうです。

源氏物語絵巻の特長

源氏物語絵巻はこれらのストーリーを彩るために制作されたイラスト集です。

本来は54編すべてに対応する絵がありますが、現存しているものはその一部のみです。

また挿絵の合間に各章を書き起こした詞書が挟まれています。現代で言うライトノベルと非常に近しい構成ですね。

鑑賞

 

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あらためて作品を見てみましょう。

『源氏物語絵巻 -宿木二- (げんじものがたりえまき -やどりぎ 2-)』です。

源氏物語の第49編を描いた作品ですね。これは薫を主人公とする源氏物語第三部の一幕です。

 

夕霧の邸宅で、匂宮と六の君の逢瀬が女官たちに露見してしまった場面を表しています。

ちなみに人物相関は

  • 薫:光源氏の次男。
  • 夕霧:光源氏の長男で。正妻がいる匂宮を自身の娘である六の君の婿にしようとする。
  • 匂宮:光源氏の外孫、薫の幼馴染。とび抜けた美貌を持っており、正妻である宇治の中君をないがしろに六の君を愛でるが、薫の気転により中君のもとへ戻る。
  • 六の君:夕霧の娘。

となっています。

 

目を引くのはこの鮮やかさと構図ですね。

唐絵の流れを汲んだ鮮やかな色彩は千年を超えてもなお、情景を運んでくれます。また、緑や青といった以降の日本画にはあまり見られない彩色も特徴的です。

構図はまるで中空から屋敷を透過しているかのような客観性を持ち、一つの画面内に多様な人物関係を表しています。

 

現代とは全く異なる生活様式と、現代と変わらない人の性が混在しているさまは非常に面白いものがあります。

そして時を越えてそれを教えてくれたこの作品もまた非常に面白いですね。

 

この作品は国宝に指定され、現在は名古屋の徳川美術館に収蔵されています。

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