“それは衆生のために” -作者不明『胎蔵界曼荼羅』を鑑賞する-

東洋画

作品概要

  • 作品名 胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)
  • 画家 不明
  • 制作時期 9世紀ごろ(平安時代)

曼荼羅について

概要

曼荼羅とは仏教における仏の世界を図式的に表したものです。

日本では本作のように絵の中に表現されることが多いですが、インドでは仏像を使って3次元的に作られることもあります。

本来は“胎蔵曼荼羅”と呼ばれていましたが、仏の世界を別の側面からみた『金剛界曼荼羅』(こんごうかいまんだら)と合わせて『胎蔵界曼荼羅』と呼び始め、さらにこれらを合わせて『両界曼荼羅(りょうかいまんだら)』と呼ばれました。

起源

教えを研究したインド

胎蔵界曼荼羅は7世紀にインドで成立した“大日経”に基づいて描かれたものです。

大日経は密教の教えや儀式を記したものであり、そこにはすべての生物が悟りを開き、大日如来へと導かれるための教えがあります。

しかし当時のインドや日本は識字率が非常に低く、仏教を修めたものか貴族しかその教えを読むことができませんでした。

僧たちは救世のためにもその教えを絵の中に留めることを考えたのでしょう。

 

ちなみに別の系統で大日如来の教えを示したものを“金剛頂経”といい、それが後に金剛界曼荼羅となりました。

日本における密教

2つの教えはサンスクリット語から漢字に翻訳され、中国へ伝来しました。そして遣唐使を介して日本へ伝えられます。

当時の日本には天台宗と真言宗の2つの密教宗派がありました。

現在に至るまでその荒行は残っていますが修行は厳しく、半ばで命を落とす人も多かったそうです。

 

例えば天台宗には有名な“千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)”があります。

これは百日間毎日、比叡山の無動寺谷を真言(しんごん)を唱えながらまわり、さらにそれを10年間繰り返すという行です。

満了後は明王堂にこもり、7日半飲まず食わず寝ずで真言を唱え人々の願いを不動明王に届けます。

行を途中でやめることはできず、行者は行を満了するか死ぬかの2択しかありません。

まさに人の限界を超える行いと言えますが、歴史上数十人だけこれを成しえた者がおり、大阿闍梨(だいあじゃり)と呼ばれるこの人たちは生きながらにして不動明王と同じ神格を持つと言われます。

神道でいえば現人神(あらひとがみ)ですね。人々は救いを求めて大阿闍梨に拝むのでしょう。

金剛界曼荼羅

金剛界曼荼羅とは大日如来の智慧(ちえ)を体系化した日本独自の図です。

智慧とは知恵であり、ここには宇宙のすべての真理が記されているそうです。

前述の通り金剛頂経を図式化したものであり、この金剛頂経は2世紀にインドの僧が悟りの中で得たものと言われています。

胎蔵界曼荼羅

胎蔵界曼荼羅は大日如来の悟りの世界を示したものです。

万物は大日如来から発生し、また大日如来へ帰依します。すべての行者・僧は修行のすえ大日如来の悟りに近づき、そこで得た教えを衆生(われわれ一般人)に伝える義務を持ちます。

胎蔵界曼荼羅のもとになった”大日経”には真言が示されており、行者や僧は真言と儀式によって悟りを目指します。

鑑賞

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あらためて作品を見てみましょう。

平安時代に描かれた『胎蔵界曼荼羅』です。

 

中央に大日如来が座り、それを囲むように弥勒菩薩や無量寿如来といった中台八葉院(ちゅうだいはちよういん)が座しています。

そもそも胎蔵とは母親の胎内をあらわしており、この曼荼羅は生命が誕生する根源にこそ真理があることを示しているのですね。

この曼荼羅は中台八葉院の他11の院に分かれており、それぞれが大日如来の悟りを外界へ伝える役割を有しています。

 

本項で紹介する曼荼羅は平安時代に描かれたものです。

まだ国としての安定とは程遠い鬼哭啾々たる時代の中で、人々はせめてもの心の平安を望みました。

胎蔵界曼荼羅は当時の日本に刺した一条の光だったのでしょう。

 

この絵は京都の東寺に保管されています。

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     数の言葉ヒフミヨのセフィーロートマンダラとして、「刀模様のながしかくマンダラ」と「〇の臍マンダラ」としたい・・・
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     ヒフミヨは△回し◇生る         (絵本「わのくにのひふみよ」)

  3. 〇△▢乃庭

    ≪…ブッダの芽は論理

    ブッダの根は倫理…≫は、、

    【 金剛界曼荼羅
      
      胎蔵界曼荼羅 】

     に相当するのかんぁ~ 

     仙厓義梵の書に「〇△」がある。
    円に遊ぶ(内接する)△から、√ を通じて、一辺[1]の正三角形と一辺[1]の正四角形(正方形)を眺望するコトができる。

     √6意味知ってると舌安泰

     数の言葉ヒフミヨ(1234)は、言葉の点線面とカタチの〇△ながしかくをウマクウマク纏め上げ、繋がりながらも通じ合い抽象化していて、計算符号(+-×÷√=)を内蔵させている。

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