“鷹の目を持って” 雪舟 作『天橋立』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 天橋立
- 画家 雪舟(1420年~1502年)
- 制作時期 室町時代中期
雪舟について
概要
雪舟は室町時代に活動した日本の水墨画家です。
明(現在の中国)で山水画を学び、帰国後にそこへ独自の解釈と技術を加えました。
雪舟が本格的に評価され始めたのは彼の死後ですが、その影響は今日の日本画壇にも及んでいます。
また、国宝指定の作品が6つもあり、日本画家の中でもトップクラスの高評価を得た画家と言えます。
生涯
作品背景
天橋立は京都府にある砂州です。
砂州とは川が運んだ土砂が堆積してできた地形の事であり、京都の他にも各地に存在します。
ただし、ここの砂州を逆さに見るとまるで天に橋が架かったように見え、非常に見ごたえがあることから、江戸時代の儒学者がこの地を日本三景の一つに指定しました。
それ以来、宮島や松島と並びこの地は日本人に愛されています。
雪舟は備中(現在の岡山県西部)に生まれていますので、三景に指定される以前からこの地を知っており、そして愛でていたのでしょう。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
雪舟作『天橋立』です。
天橋立の対岸の山から写生したと思われる構図ですね。阿蘇海を中央で分断するように天橋立の砂州が伸びていることがわかります。
画中の右上には成相寺が、その麓には龍神社が画かれていますが、これらは今も残っています。
その他、近景と遠景を墨の絶妙な濃淡で書き表し、またここで暮らす人々の営みすら連想させています。
雪舟は相国寺で修業した僧でもありましたので、このように禅の精神を作品に込めたのでしょう。
またこの作品の最も感動すべき点は、雪舟自身の持つ空間認識能力ではないでしょうか。
当時の大和絵には遠近法と言った概念が無いため、パースや構図が歪なものもありました。
しかし雪舟はそのような中において、現実世界と寸分違わない構図を画きだし、さらに濃淡で遠近感を与えました。
これが日本画に与えた影響は甚だ大きく、以降の水墨画はこれに習い写実的な風景を繊細な筆致で画けるようになりました。
ここに、山水画の黄金時代が始まったのですね
この作品は国宝に指定され、現在は京都国立博物館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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