“人体の調和” レオナルド・ダ・ヴィンチ 作『ウィトルウィウス的人体図』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 キリストの洗礼
- 画家 レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年~1519年)
- 制作時期 1474年ごろ
ダ・ヴィンチについて
概要
レオナルド・ダ・ヴィンチは15~16世紀のイタリアを中心に活動した芸術家です。
ルネサンス期の研究と発展の象徴的な人物で、あらゆる学問に秀でた人物でした。
彼が論文を残した分野は現代の理科的な学問のほぼすべてを網羅しており、また音楽や料理などにもその知的探求心を向けたことから“万能の天才”と呼ばれました。
ただし、その論文が日の目を浴びるのは19世紀になってからであり、レオナルド・ダ・ヴィンチの名が知れ渡ったのは20世紀ごろです。
生涯
作品概要
ウィトルウィウス的人体図とは、レオナルド・ダ・ヴィンチが15世紀末に描いた、人体に関するドローイングです。
彼は、紀元前1世紀にローマで活動していた建築家ウィトルウィウスが記した書物ー建築についてーをもとに、解剖学的に人体を正確に書き表し、さらにそこに内包された神秘を暴きました。
ウィトルウィウスの建築論には、古代ローマのコロッセオやアッピア街道を支えた建築理論が記されており、最古の建築理論書とも言われています。
そもそも古代ローマでは、木ネジやポンプ・脱水機を始めとした、現在の科学技術にも引けを取らないテクノロジーが存在していました。
しかし、それらはキリスト教の隆盛とローマ帝国の滅亡により失われ、ロストテクノロジーとなります。
ルネサンスの時期においては、15世紀初頭のフィレンツェでこの書物が発見されました。
失われた英知に飢えていたヨーロッパ人にとって、この発見は天からの恵みに他ならなかったでしょうね。
ウィトルウィウスの建築論の中には、彼が提唱した人体の比率に関する理論も記されており、レオナルドはこの部分を参考にドローイングを実行しました。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
レオナルド・ダ・ヴィンチ 補助作 『ウィトルウィウス的人体図』です。
ウィトルウィウスの建築論には、人体に関する記述が20項目近く記されていました。
その1例を挙げるならば
- 腕を横に広げた長さは、身長と等しいため、人体は正方形を表している
- 四肢はヘソを中心とした正円に内接する
- 肩幅は、身長の1/4と等しい
などです。
ウィトルウィウスは、建築もまた人体と同じように合理的かつ調和を重んじるべきだとしています。
またウィトルウィウスは、“人体とは宇宙である”と残していますが、レオナルドもまたこれに深く共感し、人体の持つ神秘的なまでの完璧さに感動しました。
恐らくは、”人”をまごうことのない神の作り出したものであると信じたでしょう。
この作品は医学の象徴として、現在でも多くの企業がシンボルとしています。
この作品はフィレンツェのアカデミア美術館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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