“神話の勇姿を現代へ” ミケランジェロ 作『ダヴィデ像』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 システィーナ礼拝堂天井画
- 画家 ミケランジェロ・ブオナローティ(1475年~1564年)
- 制作時期 1504年ごろ
ミケランジェロについて
概要
ミケランジェロ・ブオナローティは15~16世紀に活躍したイタリアの芸術家です。
ラファエロやダ・ヴィンチらと同じくルネサンスの最盛期を作り上げた巨匠であり、彫刻家としての活動以外にもフレスコ画や絵画、詩など多岐に活動しました。
加えてその全てが後世に大きな影響を与えたため、西洋美術史最高峰の芸術家と言われています。
生涯
作品背景
ダヴィデとは、紀元前10世紀ごろのエルサレムに実在したイスラエルの王です。
建国当初のイスラエルにおいては、サウル王がこれを治めていました。
しかし、パレスチナの遊牧民であるアマレク人との戦いにおいて、サウルは神の加護を失ったそうです。
これに危機感を感じた神に仕える祭司サムエルは国中を探し、神の加護を受けることのできる新たな王を探しました。
そして見つかったのが、ダヴィデなのですね。
ダヴィデは平凡な羊飼いだったそうですが、とても魅力的な美少年だったそうです。
このころ、サウル率いるイスラエルはペリシテ人と闘っていましたが、ペリシテ人の筆頭となっていたのが巨人ゴリアテです。
ゴリアテは強大な武力を背景にイスラエル人を威嚇しており、イスラエルは劣勢に立たされていました。
ダヴィデは食料の運搬として戦地を訪れた際にゴリアテを邂逅しますが、ゴリアテがダヴィデに対して挑発を行ったことで両者は対峙したそうです。
そして決戦の時、
ダヴィデはサウルの与えた鎧や兜を脱ぎ、石を握ってゴリアテの前に立ったそうです。
そしてこの姿を笑ったゴリアテに対し、ダヴィデは
お前は剣や槍や投げ槍でわたしに向かってくるが、わたしはお前が挑戦したイスラエルの戦列の神、万軍の主の名によってお前に立ち向かう。この戦いは主のものだ。主はお前たちを我々の手に渡される。
と宣言すると、なんと石の1投で目の前の巨人を倒しました。
そしてゴリアテの剣で首を刈ると、総崩れになったペリシテ人は戦いに敗れたそうです。
その後、ダヴィデはペリシテ人の他、多くの民族との戦闘に勝利し、イスラエルに繁栄をもたらしたそうです。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
ミケランジェロ・ブオナローティ作『ダヴィデ像』です。
この作品はミケランジェロのみならず、ルネサンスを通じて最も偉大な彫刻の一つと言えるでしょう。
再現されたのは、ゴリアテを前にダヴィデが石を構えている場面です。
ダヴィデは全ての衣装を取り去りながらも、目の前の巨人を臆することなく睨み上げていますね。
ミケランジェロは人間の肢体を研究し尽くし、理想的なプロポーションと肉体を持つ男性像の顕現に成功しました。
この作品が作られた当時のフィレンツェもまた、周囲の強大な勢力に脅かされていたそうですが、この作品はそれに対抗せんとするフィレンツェ市民の強い意志をも表しているそうです。
即ち、大理石でできたこの彫刻には、ルネサンスのもたらした人体への解明の成果の他、人間の持つ不屈の闘志や可能性すらも内包されているのですね。
この作品はイタリアのアカデミア美術館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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