“彼女は誰なのか” ピサネロ 作『公女の肖像』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 公女の肖像
- 画家 アントニオ・ディ・プッチョ・ピサーノ 通称 ピサネロ(14世紀末 ~ 15世紀半ば)
- 制作時期 1440年前後
ピサネロについて
概要
ピサネロは15世紀に活躍したイタリアの画家です。
ルネサンス初期、まだ遠近法や写実的表現が研究されている段階のイタリアにおいて、ピサネロは様々な手法で貴族たちを魅了しました。
なかでも、皇帝のために制作した物に端を発する記念メダルは、新たな文化としてその後も西洋に根付きました。
生涯
作品背景
この作品のモデルとなった女性に関してはいまだに議論が続いていますが、本項ではその中で有力と思われたものをご紹介します。
彼女の正体に迫る最大のヒントは背中の刺繍でした。これは両側に把手のある花瓶を表す、エステ家の紋章です。
エステ家はイタリアの有力貴族の一つであり、当時で既に500年近い歴史を持つ名家でした。
芸術を愛する貴族たちの中でも特にその傾向が強い家系だったため、ピサネロを含む多くの芸術家や学問を保護・援助していたそうです。
ピサネロは、自身の制作したコインの裏面にも同じような紋章をあしらっていたため、エステ家と深いつながりがあったと推測できますね。
しかしながらこの少女が厳密に誰であったかは、多くの学説が存在しています。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
ピサネロ 作『公女の肖像』です。
後ろで髪を束ねた少女は虚空を見つめ、辛うじて微笑と取れるかのような表情を湛えています。
作品全体のトーンは国際ゴシック様式を忠実になぞっているため、繊細でありながらそこはかとない陰鬱さを感じさせていますね。
丸みのある突き出た額は、ルネサンスにおける理想の美とされていました。
後方ではナデシコやオダマキが咲き誇り、その合間をアゲハ蝶やヨーロッパアカタテハが舞っています。
その全ては、静寂の中にある少女の可憐さを表現するための演出でしょう。
彼女に対するピサネロの深い忠誠心が、作品を通してありありと伝わって来ます。
この彫刻はルーブル美術館に収められています。(外部リンクに接続します。)
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