“幸福なひと時” -ベラスケス作『ラス・メニーナス』を鑑賞する-
目次
作品概要
- 作品名 ラス・メニーナス(女官たち)
- 画家 ディエゴ・ベラスケス(1599年~1660年)
- 制作時期 17世紀半ば
ベラスケスについて
概要
ベラスケスはバロック期のスペインの画家です。
スペイン絵画の黄金時代を代表する画家であり、マネは彼を『画家の中の画家』と呼んだそうです。
ベラスケスは時の王フェリペ4世からの厚遇を受けており、ベラスケスもまたその行為に応じるように宮廷画を描きました。
また、宮廷装飾責任者や応急配室長といった役職も賜っており、貴族・役人としても活躍しました。
生涯
ベラスケスの出生については、没落した貴族の家系説、キリスト教へ改宗したユダヤ人の家系説など諸説があるそうです。
11歳の時にセビリアの画家パチェーコに弟子入りしたベラスケスは、18歳まで修行をしました。
独立後、4年目に国王フェリペ4世の肖像画を描き、これをきっかけに国王に気に入られ、以後30年に渡って宮廷画を描きます。
30歳の時には修行のためにイタリアに移り、5年の修行の後『ブレダの開城』を制作しました。
これは当時建設されたばかりの離宮に飾るために依頼されたものだそうです。
49歳のときには2度目のイタリア修行へ行き、そのなかで『鏡のヴィーナス』や『教皇インノケンティウス10世』などの傑作を生みだしました。
そのころのベラスケスは、役人としても非常に高い役職についており、王宮の鍵の管理すら行っていたそうです。
これはフェリペ4世からの厚い信頼とベラスケスの高い忠誠心のもと成り立った関係であり、その信頼関係の下、ベラスケスは57歳の時『ラス・メニーナス』を描き上げました。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
『ラス・メニーナス』は1656年に制作された絵画であり、その意味はスペイン語で「女官たち」です。
この作品は非常に複雑な構成のもと描かれています。
中央の白いドレスを着た少女はフェリペ4世の娘であるマルガリータ王女で、それを取り囲むように侍女や使用人がおり、背後にはパレットを持つベラスケス自身がいますね。
そしてマルガリータ王女の後ろの壁には鏡がかかっており、そこにはフェリペ4世とマリアナ王妃が写っています。
マルガリータ王女含む画面上の人物の視線はほぼ全て王と王妃に集まっており、あたかも王と王妃が部屋に入ってきた瞬間の様子を切り取ったかのようです。
この写真のようなアイデアや、登場人物の視線が、鑑賞している我々に向かっているように錯覚させる技術は現在でも高く評価されています。
ラス・メニーナスはスペインのプラド美術館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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