“密林に身をやつして” ルソー作『赤道上のジャングル』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 赤道上のジャングル
- 画家 アンリ・ルソー(1844年~1910年)
- 制作時期 1909年
ルソーについて
概要
アンリ・ルソーはフランスで19世紀末から20世紀にかけて活動した画家です。
本業は税関職員であり、絵画は趣味程度のものでした。
税関を退職すると本格的に創作活動を開始しますが、奇抜な作風は当時の芸術界から非難されます。
しかし彼の作風はキュビズムに通ずるものがあるとされ、現代では再評価が始まっています。
生涯
制作背景
この作品に関わらず、ルソーは鬱蒼とした密林をテーマにした作品を多数描いています。
ただし、ルソー自身が実際に南国に行ったという記録は残されておらず、これらの作品は自身の想像もしくは写真誌などで得た着想をもとに作られたと言われています。
大きな疑問は、なぜ彼がこれほどまでにジャングルに固執したのかと言うことでしょう。
作品の多くは彼の退職後に描かれていますが、おそらく当時のルソーのアトリエでは、四方を囲むかのように色とりどりの密林画が立てかけられていたと考えられます。
あくまで1つの説に過ぎませんが、
アンリ・ルソーは見たこともない南国の、その中にある”命の集合”に心をときめかせていたと考えられます。
その密度は、自身の人生で経験がないほどのレベルであり、あらゆる動物の生命がさらけ出された場所と言えるでしょう。
もし人間がその場所にいたとしても、それは小さく無力な命の一つにすぎず、ともすれば瞬時に食いつくされる程度の存在でしかないかもしれません。
ルソーの描く密林には遠近感や写実性に乏しかったため、それ故に彼は日曜画家と揶揄されていました。
しかしルソーが自身の作品の世界感を明確に認識し、また各作品にてそれを忠実に描いていたことは確かです。
即ちその画風は無軌道なものではなく、毅然とした哲学の中で生み出されたものだったのでしょう。
ただし、残念ながら当時それを見出していたのは、ピカソほか小数の新進気鋭のアーティストたちだけでした。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
アンリ・ルソー作『赤道のジャングル』です。
鬱蒼としたジャングルの中で、こちらに気付いた2頭のマンドリルが振り向いた様子が描かれていますね。
また、画面の左上からはクジャクのような鳥が2頭を観察しています。
マンドリルは西アフリカの熱帯雨林に生息する霊長類ですので、ルソーはこの近辺の写真から知見を得たと考えられます。
もしもルソーに前述したような好奇心があったのなら、この邂逅にもまたワクワクしたでしょう。
恐らくルソーの頭の中には、想像で作り上げたジャングルが広がっていたのでしょうね。
そしてそこを探索しながら、目についた風景を描き続けたのかもしれません。
ルソーの作品は、それぞれが彼の庭への窓なのかもしれませんね。
この作品はワシントンのナショナルギャラリーに収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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