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“歴史の証人として” オラース・ヴェルネ 作 『ヴァルミーの戦い』を鑑賞する

風景画

作品概要

  • 作品名 ヴァルミーの戦い
  • 画家 エミール・ジャン=オラース・ヴェルネ(1789年~1863年)
  • 制作時期 1826年ごろ

ヴェルネについて

概要

エミール・ジャン=オラース・ヴェルネは19世紀のフランスの画家です。

祖父、父もまた画家であるという芸術家の家系に生まれました。

彼は肖像画や戦争画を得意とし、フランスの復古王政時代に多くの絵画を描きます。

その様は『芸術家ではなく軍人である』と言われるほどでした。

生涯

ヴァルミーの戦い

概要

この戦いはフランスとプロイセンの間で1792年に発生しました。

当時のフランスは革命により王政が崩壊しており、フランス王家に恭順していたプロイセンやオーストリアは“ピルニッツ宣言”を口実にフランス国土へ侵略します。

弱り目を狙われたフランス革命軍はこれに奮起し、兵力差を顧みずこれに応戦しました。

経緯

フランス革命は1789年に発生し、その2年後にはプロイセンとオーストリアがフランス国土へ侵略を開始します。

フランス政府は非常事態宣言を発令しますが、2つの大国は進撃を続け、フランス国土を瞬く間に蹂躙しました。

 

これに怒りを露わにしたのがフランスの市民です。

あろうことか彼らは自ら軍へ志願しこの兵力差を埋めることを望みました。

その結果フランス軍は敵軍に対し1万人以上のアドバンテージを得、ヴァルミーでの開戦を機に状況を覆したのです。

戦いへの評価

この戦いは“市民 vs 軍隊”という構図とも取れるものでした。

一般的に考えればフランスの勝利は絶望的であり、周辺国もまた同様の視点でこの戦いを見ていたでしょう。

しかしながら民衆のエネルギーがこれを破ったことは、民主主義の勝利にほかならず、フランス政府はこの戦いの直後に王政の廃止宣言をしています。

 

人類史ではこの瞬間こそが “民主主義国家>専制君主制国家” となるターニングポイントと言えましょう。

人類は、この戦いをきっかけに社会的に進化したと言えます。

鑑賞

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あらためて作品を見てみましょう。

オラース・ヴェルネ 作『ヴァルミーの戦い』です。

 

ヴェルネはフランス革命と同年に生まれたため、当然この戦いは記憶にないはずです。

しかしながら、まるで現地で見た来たかのようにこの作品を描き上げることができたのは、ヴァルミーの戦いがフランス社会の魂に刻み込まれていることにほかなりません。

ヴェルネは悪天候のもとで、自国の砲撃隊が敵軍を破る様子を正確に描き上げました。

荒れる空、立ち上る煙、各所での戦闘が、まるで鳥のような俯瞰した視点から描かれており、さらにこれを若い身空で作り上げたことに画壇は驚嘆したそうです。

 

ヴェルネはこれをきっかけに、戦争画家としてのキャリアを駆け上がりました。

 

この作品はロンドン・ナショナルギャラリーに所蔵されています。(外部リンクに接続します。)

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