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“人と神話を繋ぐ” ベルニーニ 作『アポロンとダフネ』を鑑賞する

宗教画

作品概要

  • 作品名 アポロンとダフネ
  • 画家 ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598年~1680年)
  • 制作時期 1624年ごろ

ベルニーニについて

概要

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは17世紀に活躍した、イタリアの彫刻家です。

バロックを代表する彫刻家であり、ローマ教皇たちの依頼のもと、青年期から多くの作品を手がけ、その作品たちは「奇跡」とすら形容されました。

人々は“彼はローマのために生まれ、ローマもまた彼のためにある”と評したそうです。

生涯

作品背景

アポロンとはギリシャ神話に登場する、羊飼いの守護神 / 病と治療の神 / 信託の神 / 遠矢の神といった複数の神格を持つ神です。

その美貌と精悍な体躯は、古代ギリシャにおける理想の男性像として尊敬を集めました。

もとはケルト、もしくは小アジアに起源を持つ神であったと言われていますが、最終的には太陽神と同格の存在に並べられます。

 

ダフネは同じくギリシャ神話に登場するニンフ(下級女神 , 精霊)です。

父親は河の神ペネイオスであることから、ダフネは水の精霊であると予想されますね。

 

 

アポロンは大蛇ピュトンを討ち取った英雄でもありますが、これを討ち取った帰りにアポロンは愛の神エロス(ローマ神話でのキューピッド)を嘲ります。

“遠矢の神”であるアポロンにとってエロスの持つ弓はおもちゃのように見えたのでしょう。

これに怒ったエロスは、自身の持つ金の矢でアポロンを、鉛の矢で近くにいたダフネを射抜きました。

 

アポロンは知りませんでしたが、エロスの持つ金の矢は”初めて目にした者に深く惚れ込む”性質を持ち、鉛の矢には”初めて目にした者に強く恐怖しそれを拒絶する”性質を持っていました。

これにより、アポロンはダフネに一目惚れしどこまでも追いかけようとしますが、ダフネはアポロンに恐怖しなんとか逃れようとします。

2柱の神性は無常な奔走をしますが、ダフネの体力が尽きかけた時、彼女は父である河の神ペネイオスに助けを求めました。

ペネイオスは娘の願いを聞き入れ、彼女にある魔法をかけます。

 

アポロンは意中の女性を追い求め、そしてようやく見つけました。

しかしアポロンがダフネを抱き寄せようと腕に触れた時、彼女の体に変化が起きます。

その腕が天へ向いたかと思えば、たちまち指から枝が生え始め、さらに青々とした葉を湛え始めました。

さらに髪や足もまた同様の変化をし始め、なんと彼女は一本の月桂樹に変貌を遂げてしまったのです。

 

最愛の女性を失ったこと、どころか自身の愛情が相手への恐怖になっていたことで、アポロンは失意の底に沈みました。

「せめて自分の聖樹になってほしい」

アポロンがそのように懇願すると、月桂樹の枝や葉がアポロンの頭上に降り注ぎ、王冠を形作ったそうです。

 

以来アポロンは月桂樹の冠(月桂冠)を自身の象徴とし、後世の彫刻などにもそれが受け継がれたそうです。

鑑賞

出展 : wikipedia

大きいサイズはこちら

あらためて作品を見てみましょう。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ 作『アポロンとダフネ』です。

 

大理石の削り出し、アポロンがダフネに触れたその瞬間が切り取られていますね。

完成当時、この作品はボルゲーゼ公園入口に置かれていたそうなので、公園を訪れた人々は体の一部が植物化した奇妙な女性像を目撃し、歩みを進めてその向こうにいるアポロンに気が付いたのでしょう。

つまりこれでギリシャ神話のエピソードを時間的変化も踏まえながら楽しむことができ、ベルニーニもまたそれを見越して制作をしたのでしょうね。

 

なんという計算された芸術効果、

まるで神話の世界へトリップし、彼らを直接石膏でかたどったようなリアリティです。

ベルニーニは神話の世界をこちらへ顕現させ、信仰をよりイメージさせやすいものへ昇華させました。

 

この彫刻は、ローマのボルゲーゼ美術館に収められています。(外部リンクに接続します。)

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