“日本画のイデア” -伊藤 若冲作『老松白鳳図』を鑑賞する-
日本画
目次
作品概要
- 作品名 動植綵絵-老松白鳳図-(どうしょうくさいえ-ろうしょうはくほうず-)
- 画家 伊藤 若冲(1716年~1800年)
- 制作時期 江戸時代中期(1758年~)
若冲について
概要
伊藤 若冲(いとう じゃくちゅう)は江戸中期(正徳紀~寛政紀)に活躍した日本画家です。
動植物画を大変得意とし、多くの弟子を育て日本画壇に多大な影響を残した人物の一人です。
ただしその生涯はまだ謎が残る部分も多く、目下研究対象の画家です。彼の残した作品のいくつかも真偽が分かれているそうです。
生涯
動植綵絵
動植綵絵は伊藤若冲が約10年に渡り制作した動植物画の連作です。当時の最高の画材を用いて作られているため、その状態は今でも良いですね。
若冲は熱心な仏教徒であり、この作品は“自然に生きる動物や草木にはすべて物性が宿る”という考えに基づいて描かれています。
これらの作品群は現在宮内庁が所有しており、国賓が招かれた時などに出されます。
まさに日本が誇る画家と言えましょう。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
伊藤 若冲 作『老松白鳳図』です。
前述したように、若冲は自然物の表現において卓越した技能を持つ画家です。
生い茂る松の枝で鳳凰は高らかに鳴き、それを周りの植物や鳥たちが讃えます。
鳳凰の羽は裏彩色で彩られており、また非常に繊細なタッチで描かれていることから、これが若冲の最高傑作の一つであることを痛感させられました。
この世にはいない想像上の生き物でありながら、若冲は何故ここまで現実的な鳳凰を画くことができたのでしょうか。
おそらく若冲には鳥たちのイデア界(古代ギリシャのプラトンが唱えた理想世界)が見えていたのでしょう。
絵師として、また仏教徒として自然に向き合っていた伊藤若冲は、本人も知らないうちに悟りの世界に足を踏み入れていたのですね。
この作品は宮内庁三の丸尚蔵館に収蔵されています。
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