“それは画家の叫び” 前編-ムンク作『叫び』を鑑賞する-
目次
作品概要
- 作品名 叫び
- 画家 エドヴァルト・ムンク(1863年~1944年)
- 制作時期 19世紀末
ムンクについて
概要
エドヴァルト・ムンクは北欧ノルウェー生まれの画家です。
17歳の時に王立絵画学校に入学し、芸術の道に進みました。
彼の代表作は何と言っても『叫び』でしょう。
見る人の多くを不安にさせるこの絵は、ムンクの生涯を象徴した作品といえますね。
ムンクをはじめとしたこの時代のヨーロッパの画家の多くは写実性を捨て、人間の心理的な側面を描くようになりました。
のちに『世紀末芸術』とよばれるこれらの傾向は時代を映した鏡としても貴重なものです。
生涯
死とは
彼の生涯は悲愴に満ちています。
ムンクは1863年に医師のもとに生まれましたが、5歳の時に母親を、12歳の時に姉を亡くしました。
母の死後、父のクリスティアンはキリスト教に狂信的になり、子供たちにも厳しく接したそうです。
多くの画家はこのような壮絶な経験を経るからこそ人の域を超えた作品を創るのでしょうね。
ムンクの場合は早くして『人の死』に触れたのでしょう。
これら子供時代の壮絶な経験は、彼の作風に大きく影響することになります。
画家としての修業
絵画学校に入学する際も父親を説得したうえで入学したそうです。
入学後は精力的に活動し展覧会などにも出展しましたが、彼の描いた作品は酷評されました。
しかし、彼の才能を見抜いた画家の助けで27歳の時にフランスへ留学し、当時最先端だったさまざまな技法を学びます。
この留学の最中父が亡くなり、それもあってかムンクは『生命のフリーズ』という彼の作風に大きな影響を与えるテーマを得ました。
個展開催
帰国したムンクは知人の画家の招きにより、ドイツのベルリンで個展を開くこととなります。
フランスで多くの印象派絵画に触れたムンクは、本人の気質も相成り、精神からくるイメージを作品へ如実に体現させました。
そして留学中に得た『生命のフリーズ』をテーマとした個展を開き、そのままベルリンに拠点を移します。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
「叫び」は1893年に制作された作品です。
このころのヨーロッパでは世紀末芸術が主流であり、この作品もこの主義に傾倒したものですね。
幼少期の体験からムンクは「愛情」と「死」、及びそれがもたらす「不安」を表現しようとしました。
この作品はオスロの街角でムンクが聞いた絶叫(幻覚)と、それを聞くまいと耳をふさぐ様子が描かれています。
ムンクが生涯抱え続けた不安を見る人に訴えかけているようですね。
この作品はノルウェーのムンク美術館に所蔵されています。
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