“印象主義の教科書” シスレー作『積み藁』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 積み藁
- 画家 アルフレッド・シスレー(1839年~1899年)
- 制作時期 1895年
シスレーについて
概要
アルフレッド・シスレーは19世紀にフランスで活動した印象派画家です。
もともと画家を志望していたわけではありませんが、青年期にモネやルノワールに出会いその世界に傾倒し始めます。
しかしほかの印象画家同様に彼の作品の評価は低く、またそのような中においても終生画風を変えることはありませんでした。
そんなシスレーを指して真の印象派画家と呼ぶ人もいました。
生涯
制作背景
この作品はシスレーが没する4年前、つまりこの画家の晩年に描かれたものですね(当時50代半ば)。
別記事に参照した通り、シスレーは30代の時に経済的な困窮を迎え苦労したことがありますが、その脱出のきっかけとなったのが、第1回印象派展でした。
ここで出会った収集家により、シスレーはイギリスを訪れ、ロンドンのテムズ川周辺で写生に没頭する機会を得ます。
シスレーの作品は典型的な印象主義に基づいていると言われますが、その原点がここにあったのですね。
この作品はそこからさらに20数年後に描かれました。
印象派画家として円熟期を迎えており、また横道にそれることなく印象主義をひたすらに突き詰めた画家としての作品です。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
アルフレッド・シスレー作『積み藁』です。
中世ヨーロッパでは、小麦の脱穀機を個人が持つことはなかなかできなかったため、村の家々で順番に使っていたそうです。
積み藁は、刈り取った穂を脱穀するまでまとめておくために積み上げられていたものであり、貯蔵の役目を持っていたのですね。
また、これにより脱穀するために効果的に乾燥させることができたそうです。
即ち、西洋人にとってこの風景は田舎の原風景の一つであり、風物詩だったのですね。
一般にはクロード・モネ作のものが有名ですが、このテーマ自体が印象派画家にとってポピュラーなものでした。
故にシスレーが積み藁をモデルにしたのは必然と言えるでしょう。
時期は秋のはじめ頃の夕方少し前でしょうか、
長く伸びた影と、黄金色に照る地面がのどかな麦畑を演出しています。
色遣いから連想するに、シスレーはこの作品に豊穣の喜びを込めたでしょうね。
積み藁及び地面には、赤やオレンジと言った暖色が多く用いられ、中央の男性の満ち足りた感情を表しています。
また他の画家の積み藁と比べると、シスレーの描いた積み藁は、輪郭部に丸や円を効果的に用いていることがわかります。
のどかな風景のもつ温かさを、構成と色合いで叙情的に表現した作品と言えるでしょう。
この作品は諸橋近代美術館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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