ジャポニスムとは

芸術用語

概要

ジャポニスムとは19世紀のヨーロッパを中心に広がった、日本文化の一大ブームのことです。

ジャポニスムの影響はジャンル、国、年代をまたぐ広い範囲に与えられ、もはや西洋美術史の事件の一つに数えられています。

古くから西洋絵画は写実性と立体感を追求した文化をもって発展してきましたが、大和絵は対照的に平面のなかに世界観を表現してきました。

比較

大和絵は浮世絵へと昇華するなかでメリハリと動きを表現します。

歌川広重 作 “大橋あたけの夕立”

 

ジャン・ベロー作 “雨のポワソニエール大通り”

例えば歌川広重とジャン・ベローを比較してみましょう。

西洋画は目で見えた風景をいかに正確に書き写すかを追求した結果、現代でいう“カメラ”の役割を目指しました。この中では傘や路面の反射を利用して間接的に雨を表現していますね。

一方、浮世絵は雨を直接描くことで画のなかにストーリーを持たせ、戸惑う人々やその後の動きすら想像できる“動画”として機能しています。

お互いに異なるベクトルで進化した技術は、それらが交換された時に衝撃を与えあったことでしょう。

日本文化の流入

日本画を始めとした文化は19世紀の万博などで脚光を浴び始めました。

その流行の中心は専らパリであり、熱心な収集家はジャポニザンと呼ばれます。

オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホもその一人であり、“タンギー爺さん”の中には背後に浮世絵が描かれています。また、上記の歌川 広重 作“江戸名所百景 -大橋あたけの夕立-“に特に感動し模写したそうです。

フィンセント・ファン・ゴッホ作 “タンギー爺さん”

その他クロード・モネは自身の妻に着物を着せ、モデルとした絵画を描いています。

クロード・モネ作 “ラ・ジャポネーズ”

収集家とは残らず、集めた宝の前に垂涎の表情を浮かべるものです。

ゴッホ/モネはともにキャンパスに向かいつつ、こみ上げる興奮を抑えきれなかったでしょうね。

 

画像からもわかる通り、特に好まれたのは浮世絵です。

明瞭に分けられた色彩と大胆な構図は西洋人の目から何度も鱗を落としました。

ただし、金地に描かれた琳派の絵なども彼らを喜ばせたそうですよ。

琳派の技術は後にグスタフ・クリムトなどに影響を与えました。

影響

浮世絵のそもそもの役割は大衆芸術です。

すなわち、安価で分かりやすく大量生産できることが魅力でした。

ヨーロッパでははじめ、芸術の表現を広げるために受け入れられましたが、その後は本来の役割である大衆性に目を向けられるようになります。

 

そして平面の中で分かりやすく世界観を表現する技術はポスターの発展に多大な影響を与えました。

そしてロートレックやミュシャといった大家が生まれたのですね。

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