“性と神秘の混合” クリムト 作 『ユディトⅠ』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 ユディトⅠ
- 画家 グスタフ・クリムト(1862年~1918年)
- 制作時期 1901年ごろ
クリムトについて
概要
グスタフ・クリムトは19世紀から20世紀に活躍したオーストリアの画家です。
官能的なテーマや死体さえいとわずモデルにしたことから、反感を買うことも多かったですがその挑戦的なスタンスを評価する声も同様に多かったです。
またジャポニスム、つまり日本画の影響を受けた画家の一人でもあります。
生涯
作品のテーマ -ユディトについて-
ユディトとは旧約聖書の外典に登場するユダヤ人の女性です。
寡婦であったユディトは、豊富な資産と美貌を持った女性でしたが、同時に神への強い信仰心を持っていたため人々から尊敬されていました。
あるとき、アッシリアのネブカドネザル王が、彼女の住んでいる国を亡ぼすためにホロフェルネスを差し向けました。
ホロフェルネスは町の水源を断ったため、町の管理者であった男性は降伏を考えますが、ユディトは自分がホロフェルネスのもとへ向かうと宣言します。
そして町の人々へ神への忠誠を訴えると、美しく着飾りホロフェルネスのもとへと向かいました。
ホロフェルネスは、エルサレム進軍への作戦を提案した美しいユディトを、喜んで天幕へ迎えました。
そして彼女のために贅沢な宴を用意しましたが、ユディトは決して異教の料理を口にしなかったそうです。
4日目の夜、ホロフェルネスはユディトを自身の天幕へ呼ぶと、二人だけの宴に酔いしれます。
しかし、やがて酔いつぶれてホロフェルネスが眠った時、ユディトは近くにあった短剣で彼の首を切り落としました。
ユディトは側近とともに自分の町へ戻りますが、これを知ったアッシリア軍は慄いてしまいました。
ユディトたちはこのチャンスを逃さず、敵軍を破ったそうです。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
クリムト 作『ユディトⅠ』です。
クリムトは神話上の美女を、実在の女性をモデルにすることでリアルに表現しました。
イメージしたのは、ユディトがホロフェルネスを殺した後の場面でしょうか、傍らには男性の首がありますね。
しかしながら、彼女の表情は相手を誘惑するように煽情的です。
これは神話上の複数の場面を1つのキャンバスに盛り込んだものと言えましょう。
彼女の姿態や表情は、男を誘惑する瞬間/男を討ち、主に感謝する瞬間/町へ帰った瞬間/の全てを表現しているのでしょう。
ある種、ピカソのキュビズムを先駆けていると言えますね。
また、別項でも述べましたが、クリムトは俵屋宗達などが用いた絢爛な表現を研究していました。
この作品にあしらわれた金を効果的に使った表現は、そこに端を発しているのでしょう。
クリムトは写実性の追求や、異文化の取り込みをもって神話画・宗教画の新たな境地を開拓しました。
オーストリアの国宝と呼ぶべき作品でしょう。
この作品はオーストリアギャラリーに所蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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