“マイナー画家の矜持” ミレー 作 『オーヴェルニュにて』を鑑賞する
目次
作品概要
- 作品名 オーヴェルニュにて
- 画家 ジャン=フランソワ・ミレー(1814年~1875年)
- 制作時期 1868年ごろ
ミレーについて
概要
ジャン=フランソワ・ミレーは19世紀フランスの画家です。
駆け出しのころはルネサンスを熱心に勉強し肖像画や人物画、裸婦を中心に活動しましたが、フランス革命の時期に描いたものを契機に農民画を描き始めました。
その後、農村であるバルビゾンに移住すると精力的に制作を続けましたが、彼の描く農民たちはその悲惨さから政府への悪印象を煽るものも多かったそうです。
しかしながら晩年及び死後は彼の評価が高まり、今ではバルビゾン派の一人に数えられています。
生涯
制作背景
舞台となったオーヴェルニュは、フランスの中央からやや南に位置する高地です。
首府はウェルキンゲトリクスを生んだ古都クレルモン=フェランであり、ミレーは妻の湯治のためにこの地方を訪れました。
第二帝政時代にこの地を訪れた彼は、いくつかの風景画を描きます。
別記事で紹介したように、バルビゾン派が現れるまでの絵画界はアカデミズムの流れをくむ宮廷画や新古典主義的絵画が支配的であり、風景画は『格下』というレッテルを張られています。
しかしコレラの流行や激動の社会を経験したミレーにとって、牧歌的で温かみのあるオーヴェルニュの田舎風景は、精神的に非常に価値ある題材であったことでしょう。
脚色をしないありのままの風景をキャンバスに収めた彼の作品は、1867年のパリ万博で高く評価され、同時に風景画の価値を不動のものにしました。
鑑賞
作品を見てみましょう。
ジャン=フランソワ・ミレー 作『オーヴェルニュにて』です。
万博にこそ出品されなかったものの、同時代に描かれた明るい色彩の風景画です。
丘の上の牛や少年を見上げる形で描かれており、雨雲や青空のコントラストが非常に美しいですね。
この作品は同時代の他のものに比べ、絵全体がいくぶん滲んだ様に描かれています。
これにより、この風景は万人の心にどこか懐かしい印象を与え、空と大地と動物たちが各々の心象風景を映し出します。
また、ミレーが生涯にわたって自分の作品の主人公とした“農民”もしっかりと表現されていますね。
このあと第二帝政は終わりを迎え、続く第三共和政においてフランスは帝国主義へ突き進みます。
それでもミレーの描いた作品たちは、人の原風景そのものとしてのちの時代へ引き継がれていきました。
この作品はアメリカのシカゴ美術館に収蔵されています。(外部リンクに接続します。)
この記事へのコメントはありません。