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“江戸ネコ歩き” 歌川 国芳 作『其のまま地口 猫飼好五十三疋』を鑑賞する

浮世絵

作品概要

  • 作品名 其のまま地口 猫飼好五十三疋(そのままじぐち みやうかいこう ごじうさんひき)
  • 画家 歌川 国芳(1798年~1861年)
  • 制作時期 1848年ごろ

国芳について

概要

歌川 国芳(うたがわ くによし)は江戸時代末期の浮世絵師です。

同年代に活躍した歌川 広重とともに江戸を代表する浮世絵師になりました。ただし、風景画をメインに活動した広重と違い、国芳は風景画、歴史画、風俗画、狂画と多岐に活動していました。

また、無類の猫好きとしても知られています。

生涯

無類の猫好き

国芳は無類の猫好きとしても知られていました。彼の家には常に十匹前後の猫がおり、彼らを抱きながら絵を描いていたそうです。

猫たちが無くなると、悲しみに暮れた国芳はそのたびに回向院へ参り、彼らの供養をしていたそうです。

なんと家には猫たちの戒名が書かれた遺影まであったそうです!

 

(回向院とは両国にある浄土宗の寺院です。無縁仏や動物霊も広く受け入れており、それらの供養と生まれ変わりを願う者たちがここへ参ります。)

 

当然、猫たちを題材にした作品も多く描かれました。

国芳の作品に登場する猫たちは非常に人間味があり、ものによっては着物を着て世相を風刺するような振る舞いをする者さえありました。

 

これには国芳の遊び心と反骨心が同時に影響しています。

時は天保、水野忠邦によって断行された天保の改革は、役者絵・美人画といった風紀を乱す娯楽を厳しく禁じます。

それに腹を立てた国芳は、猫を始めとした動物たちを人や役者に見立てることでこれを回避したのです。

 

他にも、絵を描く国芳の横を猫が通り過ぎているような構図の作品を自ら描いたりと、国芳はユーモアに富んだ作品たちも多く制作しました。

鑑賞

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あらためて作品を見てみましょう。

歌川 国芳 作『其のまま地口 猫飼好五十三疋』です。

 

へんてこなネーミングですが、これは歌川広重の『東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)』をもじったものです。

作品は3つの浮世絵の連作になっていますね。

 

作品では五十三匹以上の猫が描かれていますが、彼らの行動は東海道の宿のシャレになっています。

吉原→「ぶち腹(腹もぶちだ)」   蒲原→「てんぷら」

由比→「鯛」   興津→「起きず」

江尻→「かぢり」   府中→「夢中」

鞠子→「張り子」   岡部→「赤毛」

                      など・・・

何よりも驚かされるのは国芳の観察力であり、

全ての猫たちは情緒豊かに、かつそれぞれが独立した情景を演出しています。

 

現代のイラストレーターが描いたと言っても、じゅうぶんに通用する普遍性もありますね。

 

皆さんもお気に入りの一匹を探してみてください。

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