“創作への誇り” レンブラント 作 『放蕩息子の帰還』を鑑賞する
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作品概要
- 作品名 放蕩息子の帰還
- 画家 レンブラント・ファン・レイン(1606年~1669年)
- 制作時期 1667年ごろ
レンブラントについて
概要
レンブラント・ファン・レインは17世紀のオランダ人画家です。
幼いころから絵画のみならず多くの分野に才能を発揮しており、画家としては明暗を巧みに表現した画法でオランダを代表する存在になりました。
今日でも当然その評価は高いですが、彼の人生は苦難に満ちていました。
生涯
作品のテーマ -イエスの語った例え話-
この作品は、キリスト教に伝わる有名な例え話をもとに描かれています。
あるところに2人の息子を持つ父親がいました。
ある日、下の子が父へ財産の分与を要求します。親が元気なうちに財産を譲り受けたかったのでしょう。
父親はこの申し出に快く応じますが、大金を手にした息子はすぐさま親元を離れ、遠い地でぜいたくな暮らしを始めました。
しかし、その土地に干ばつが発生すると、蓄えのない放蕩息子はたちまち困窮しています。
一方で父親と上の子は堅実な暮らしをしていたため、十分な蓄えはおろか使用人の面倒まで見ていました。
背に腹が替えられなくなった放蕩息子は、父親に自身の行いを懺悔し、使用人の身分で構わないからおいてくれと懇願します。
厚顔無恥な弟に対し兄は怒りましたが、父親は帰ってきた息子を涙で迎え、最高の衣服と食事を与えました。
抗議する兄に対し父親は、
「死んだと思っていた息子が返ってきたのだ。祝宴を開くのは当然だろう。」
と諭しました。
この逸話は、神の慈悲深さを例えたお話です。
父親=神
放蕩息子=罪人
兄=敬虔な信徒
と置き換えればイメージがしやすいでしょう。
どんなに罪深い人間でも、己を顧みて慈悲を請えば神はそれを受け入れるということですね。
鑑賞
あらためて作品を見てみましょう。
レンブラント 作『放蕩息子の帰還』です。
自分の愚かさに涙する息子を、父親が抱きしめた瞬間が描かれていますね。
レンブラントは主題である二人の人物に対し、やわらかなスポットライトを与えることで祝福を表現しました。
父親の顔は慈愛に満ち、取り囲む者たちもまた彼を憐れみ、また暖かな感情を向けていることが伝わってきますね。
驚くべきはレンブラントがこの作品を描いた時期でしょう。
この作品は彼が亡くなる前年に描かれました。
別記事で参照している通り、この頃のレンブラントは債務や隣人の死に苦悩する日々を送っています。
しかしながら彼の創作意欲は絶えることが無く、むしろすがるように絵画を制作していました。
この作品は見るもの対し、心の安らぎを与えています。
レンブラントは生涯を通じて、画家としての使命を模索していましたが、その一つの答えとしてこの作品は在るのでしょう。
この作品はロシアのエルミタージュ美術館に所蔵されています。(外部リンクに接続します。)
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